本文へ移動

マンション売却ガイド

マンションの売出価格の考え方|査定額・手残り・住み替えをどう考える?

マンションの査定を受けると、次に「では、いくらで売り出しますか」と考えたくなるかもしれません。

ただ、査定を依頼したからといって、すぐに売却を決める必要はありません。

「今売ると、どのくらいになりそうかを知りたい」 「住宅ローンを返したあと、いくら残るのか知りたい」 「売却できた場合、次はどのくらいの住まいへ買い替えられるのか考えたい」

そうした目的で査定を受ける人もいます。

その場合、最初に決めるべきなのは売出価格ではありません。

まず確認したいのは、売ったら、いくら残りそうなのかです。

査定価格や市場の価格帯を確認し、住宅ローン残債、売却に必要な費用、税金が発生する可能性まで整理する。そこで見えてくる手残りをもとに住み替えを考え、今売るのか、まだ売らないのかを判断する。

売出価格を決めるのは、その先です。

この記事では、査定結果を受け取ってから売出価格を決めるまでを、売却後の資金計画まで含めて整理します。

目次
  1. STEP 1|査定額を見て、すぐ売出価格を決めなくていい
  2. STEP 2|まず「売ったらいくら残るか」を考える
  3. STEP 3|税金・特例は手残りを変える可能性がある
  4. STEP 4|手残りから、次の住まいを考える
  5. STEP 5|売ると決めたら、市場の価格帯を確認する
  6. STEP 6|売出価格は「いくら高く出せるか」だけで決めない
  7. STEP 7|価格交渉まで含めて、販売方針を決める
  8. STEP 8|販売開始後は「市場の反応」を見る
  9. 不動産会社に確認しておきたいこと
  10. 売出価格を決める前に、順番を整理する
  11. よくある質問

STEP 1|査定額を見て、すぐ売出価格を決めなくていい

最初に、5つの金額を分けて考えておきます。

査定価格は、不動産会社が市場データ、比較事例、物件条件などをもとに考えた価格判断の一つです。買取価格ではなく、その金額で売れることが保証されているわけでもありません。

売出価格は、実際に市場へ売り出すときに設定する価格です。査定価格と同じである必要はなく、最終的に決めるのは売主です。

成約価格は、実際の売買契約で売主と買主が合意した価格です。売出価格とは別のものです。

そして、売却を検討するときにもう一つ重要なのが、手残りです。

さらに住み替えを考えるなら、住み替えに使う資金も分けて考える必要があります。

つまり、

査定価格=売出価格=成約価格=手残り=次の家に使える金額

ではありません。

査定を受けた段階では、まず「いくらで売り出すか」ではなく、「この査定結果を前提に売却した場合、自分の資金計画がどうなるのか」を確認しても構いません。

査定価格そのものの見方や、比較事例・査定根拠の確認方法については、「マンション査定書の見方」で詳しく解説しています。

STEP 2|まず「売ったらいくら残るか」を考える

たとえば査定価格が7,000万円だったとしても、7,000万円をそのまま自由に使えるわけではありません。

売却後の資金を考えるには、大きく次のように整理します。

想定される売却代金
- 住宅ローン残債
- 売却に必要な諸費用
- 税金が発生する場合の税負担
= 想定手残り

これは正確な手残りを計算する式ではなく、売却を考えるための整理方法です。

売却時には、住宅ローンが残っていればその返済を考える必要があります。また、仲介手数料などの売却費用がかかります。売却によって譲渡益が生じる場合などには、税金も手残りに影響する可能性があります。

そのため、不動産会社から「7,000万円前後で売れる可能性があります」と言われたときに確認したいのは、7,000万円という数字だけではありません。

「仮にその価格帯で売れた場合、売却後の資金はどの程度になりそうか」

まで整理して初めて、その査定結果を自分の生活設計に結びつけやすくなります。

一方で、必要な手残りから逆算して売出価格を決めても、その価格で市場が評価してくれるとは限りません。

市場でどの程度の価格が考えられるのかという問題と、売主がいくら必要なのかという問題は、分けて考える必要があります。

STEP 3|税金・特例は手残りを変える可能性がある

マンションを売却するときは、売却価格だけでなく税務上の確認も必要です。

土地・建物の譲渡所得は、単純な「売却価格-購入価格」で決まるものではありません。譲渡価額から取得費や譲渡費用などを差し引いて譲渡所得を計算する仕組みになっています。

また、自宅として使っていた不動産の売却では、一定の要件を満たす場合に利用できる可能性がある特例があります。

代表的なものとして、居住用財産を売却した場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除する特例があります。

さらに、売却した年の1月1日時点で、家屋・敷地の所有期間がともに10年を超えていること等、一定の要件を満たす場合には、軽減税率の特例を利用できる可能性があります。

一定の買換えでは、譲渡益に対する課税を将来へ繰り延べる特例もあります。

ここで注意したいのは、制度名を知ることと、自分が利用できるか判断することは別だという点です。

たとえば買換えの特例は「税金がなくなる制度」ではなく、一定の要件のもとで課税を繰り延べる仕組みです。

また、買換え特例は、3,000万円特別控除や軽減税率との選択適用になります。

一方、3,000万円特別控除と軽減税率は、一定の要件を満たせば併用できる場合があります。

つまり、「居住用財産の税制はすべてどれか一つしか使えない」というわけでも、「制度をすべて組み合わせればよい」というわけでもありません。

取得費をどう扱うか、どの特例を利用できるか、どの制度を選択するか、最終的な税額はいくらかといった判断は、個別事情によって変わります。

そのため不動産会社には、

「この売却では、税務上どんなことを確認しておく必要がありますか」

と聞いてみるのも一つです。

売却担当者自身に税理士と同じ判断を求めるという意味ではありません。

居住用財産の特例が関係する可能性があるのか、所有期間が論点になりそうか、売却益・売却損のどちらが想定されるのか、買換えに関する制度の確認が必要なのかなど、売却後の資金計画に関係する確認事項を整理してくれるかを見るということです。

適用可否や正確な税額など、個別の税務判断が必要になったら、税理士や税務署などへ確認します。

STEP 4|手残りから、次の住まいを考える

住み替えを考えているなら、査定結果の意味はさらに変わります。

知りたいのは、

「7,000万円で売れるのか」

だけではなく、

「7,000万円前後で売れた場合、自分たちは次にどのような住まいを考えられるのか」

ではないでしょうか。

そこで、想定される売却価格帯、住宅ローン残債、売却諸費用、税務上確認すべき事項を整理し、まず想定手残りを考えます。

ただし、手残り=次の住宅の購入価格でもありません。

手元に残った資金のうち、いくらを次の住宅の自己資金として使うのか。生活予備資金などとして、いくらを手元に残しておくのか。新しい住宅ローンをどの程度組めるのか。

こうした条件によって、次に購入できる住宅の予算は変わります。

考え方としては、

想定手残りのうち次の住まいに充てる自己資金
+ 新たに調達できる住宅ローン等
= 次の住宅予算を考える材料

と整理できます。

生活予備資金など、手元に残しておきたい資金は、次の住宅へ充てる自己資金とは分けて考えます。

必要に応じて不動産会社だけでなく金融機関などとも確認しながら、次の住宅購入計画を整理していきます。

この段階で、

「今売れば希望する住み替えができそうだ」

と考える人もいれば、

「今の条件なら、まだ売らない方がよさそうだ」

と判断する人もいるでしょう。

査定は、その判断材料を得るために使うこともできます。

STEP 5|売ると決めたら、市場の価格帯を確認する

売却する方針が決まったら、ここで初めて具体的な売出価格を考えます。

見るべきなのは査定価格だけではありません。

確認したいのは、

  • 比較できる成約事例
  • 現在売り出されている競合物件
  • 比較物件と自室の違い
  • 売主が希望する条件
  • いつまでに売りたいか
  • どのような販売戦略を取るか

です。

同じマンションの事例であっても、専有面積、階、向き、間取り、室内状態、売買された時点などが異なれば、そのまま自室の価格にはなりません。

また、一般の売主が市場のすべての成約価格を網羅的に把握できるとは限りません。

不動産会社から成約事例を提示されたら、

「なぜこの事例を比較対象にしたのか」 「自室とは何が違うのか」 「その違いを価格判断にどう反映しているのか」

まで聞くことが大切です。

なお、市場統計で「新規登録価格」と「成約価格」に差があったとしても、それをそのまま「平均○%値下げして売れた」と解釈することはできません。新規登録された物件群と成約した物件群は同じ物件の一対一比較ではないからです。

STEP 6|売出価格は「いくら高く出せるか」だけで決めない

「どうせ価格交渉されるから、最初は高めに出しておく」

という考え方があります。

それも販売戦略の一つではあります。

高めに設定しておけば、購入申込みが入った際に価格交渉へ対応する余地を持てるかもしれません。

ただし、高く出すことには反対側の影響もあります。

住宅を探している人は、ポータルサイトなどでエリア、広さ、間取りだけでなく価格条件も指定して物件を探します。

そのため価格を上げることで、本来見てもらいたかった買主候補の検索条件から外れる可能性があります。

たとえば市場や比較事例から見て6,000万円台後半を検討する買主と接点を持ちたい物件を、「交渉されるかもしれないから」という理由だけで大きく上の価格帯へ設定すれば、その買主たちに物件そのものを発見してもらいにくくなる可能性があります。

重要なのは、

「いくら高く出せるか」ではなく、「この価格にすると、誰に見てもらえるのか」

まで考えることです。

ポータルサイトの具体的な価格区切りはサービスや時期によって確認が必要なので、「○万円を超えると必ず表示されない」といった固定的な境界で考える必要はありません。

販売開始前に、不動産会社へ、

「この価格にすると、どの価格帯を探している買主に見てもらえると考えていますか」

と聞いてみると、価格設定の意図が分かりやすくなります。

STEP 7|価格交渉まで含めて、販売方針を決める

売出価格には、大きく異なる考え方があります。

一つは、ある程度の交渉余地を持たせた価格から始める方法です。

もう一つは、市場や競合を踏まえて妥当と考える価格から販売を始め、当初は価格交渉を前提にしない方法です。

後者には、最初からより多くの買主候補に見てもらうことを重視し、不要な価格上乗せをしないという考え方があります。

どちらが正しいというものではありません。

高めに始めれば交渉余地を持てる可能性がある一方、検討対象から外れる可能性があります。

妥当と考える価格から始めれば買主に価格を理解してもらいやすくなる可能性がある一方、その価格で必ず売れるわけではありません。

また「価格交渉には応じない」と販売開始時に考えていても、実際に購入申込みが入ったときには、価格だけでなく引渡し時期など他の条件も含め、最終的にどう対応するかを売主が判断します。

大切なのは、販売開始前に、

「この売出価格は、交渉余地を持たせた価格なのか。それとも現時点で妥当と考えて設定する価格なのか」

を不動産会社と共有しておくことです。

価格設定と、その後の交渉方針を別々に考えないようにします。

STEP 8|販売開始後は「市場の反応」を見る

売出価格を決めても、それで価格判断が終わるわけではありません。

販売を始めたら、市場から返ってくる情報を確認します。

たとえば、

  • 物件情報への問い合わせはあるか
  • 内見につながっているか
  • 内見後にどのような反応があるか
  • 比較されている競合物件に変化はないか
  • 購入申込みが入った場合、どのような条件が提示されているか

といった情報です。

問い合わせが少ないからといって、機械的に「○週間経ったから○%値下げする」と決める必要はありません。

価格以外に、物件情報の見せ方、販売状況、競合の変化などを確認すべき場合もあります。

一方、一定の販売活動を行っても想定した買主から反応が得られないなら、当初の価格判断を見直す材料になります。

販売開始時に、

「どのような反応があれば価格を維持するのか」 「どのような状況なら価格を再検討するのか」

を不動産会社と話しておくと、値下げを感覚だけで決めにくくなります。

不動産会社に確認しておきたいこと

売出価格を考えるときは、「いくらがいいですか」だけを聞くのではなく、判断材料を分けて確認します。

価格について

  • この査定価格の根拠は何ですか?
  • どの成約事例と比較していますか?
  • 現在の競合物件は何ですか?
  • この売出価格にする理由は何ですか?
  • この価格だと、どの価格帯を探している買主に見てもらえると考えていますか?
  • 高めに出す場合のメリットとデメリットは何ですか?
  • 最初から妥当と考える価格で出す場合は、どのような販売方針になりますか?

手残りについて

  • この価格帯で売れた場合、住宅ローン返済後の資金はどの程度になりそうですか?
  • 仲介手数料など、どのような売却費用を見込んでいますか?
  • 税金について確認しておくべきことはありますか?
  • 利用できる可能性のある居住用財産の特例について、確認すべきものはありますか?
  • 個別税務について、どの段階で税理士や税務署へ確認すべきですか?

住み替えについて

  • 想定手残りを前提に、次の購入計画をどう整理すればよいですか?
  • 売却と購入の順番によって、資金計画で確認すべきことはありますか?

売却を先にするか、購入を先にするかといった具体的な住み替え方法は、資金状況や住宅ローンなどによって変わるため、ここでは詳細には踏み込みません。

まずは、今の家を売った場合の資金を把握してから、次の住まいを考えるところまで整理できれば十分です。

売出価格を決める前に、順番を整理する

マンションを売却するとき、最初から「できるだけ高い売出価格」を探す必要はありません。

まず確認したいのは、

今の市場ではどの程度の価格が考えられるのか。

次に、

その価格で売れた場合、自分にはどの程度の資金が残りそうなのか。

そして、

その資金を前提に、住み替えや今後の生活をどう考えられるのか。

ここまで整理したうえで、今売却する合理性があると判断したなら、初めて具体的な売出価格と販売戦略を考えます。

査定価格は、そのスタート地点の一つです。

売出価格は査定価格から自動的に決まるものではなく、市場の価格帯、現在の競合、自室の条件、売主の希望、売却期限、そして販売方針を重ねて決めていくものです。

そして最終的に、その価格で売り出すかどうかを決めるのは売主です。

売出価格を考える前に、「売ったらいくら残るのか」を考える。

それによって、「いくらで売りたいか」だけではなく、「そもそも今売るのか」というところから、自分の条件で判断しやすくなります。

よくある質問

査定を受けたら、売らなければいけませんか?

査定を受けることと、売却を決めることは別です。

査定結果から現在の価格水準を把握し、住宅ローン残債や売却費用、税務上の確認事項などを整理して、「今売った場合にどの程度の資金が残りそうか」を考える材料にすることもできます。

その結果を見てから、売るかどうかを判断して構いません。

7,000万円で売れたら、7,000万円を次の家に使えますか?

売却価格をそのまま次の住宅購入資金として考えることはできません。

住宅ローンが残っていれば返済が必要で、仲介手数料などの売却費用もあります。また、売却内容によっては税負担が関係する可能性もあります。

まず想定手残りを整理し、そのうちいくらを次の住宅へ使うのか、新たにどの程度の住宅ローンを組むのかなどを別に考えます。

マンション売却にはどんな税金がありますか?

不動産を売却して譲渡所得が生じる場合は、所得税・住民税などが関係します。

一方、自宅の売却では一定の要件を満たす場合、3,000万円特別控除、所有期間等に応じた軽減税率、一定の買換えに関する課税繰延べなどの特例を利用できる可能性があります。

どの制度を利用できるか、正確な税額がいくらになるかは個別事情によって異なるため、必要に応じて税理士や税務署などへ確認してください。

査定価格より高く売り出した方がいいですか?

一律には決められません。

高く設定することで交渉余地を持てる可能性がある一方、購入希望者が設定している価格条件によっては、比較対象に入りにくくなる可能性があります。

査定価格との差額だけを見るのではなく、成約事例、現在の競合、想定する買主が探している価格帯などを確認し、その価格から販売を始める理由を不動産会社に聞くことが重要です。

値下げ交渉を見込んで、高く出した方がいいですか?

それも販売戦略の一つですが、唯一の方法ではありません。

ある程度の交渉余地を持たせて販売を始める方法もあれば、市場や競合から妥当と考える価格を設定し、当初は価格交渉を前提にしない方法もあります。

どちらの場合も、価格だけを決めるのではなく、「どの買主に見てもらいたいのか」「購入申込みが入ったらどのように対応するのか」まで販売開始前に整理しておくことが大切です。

この記事を書いた人

大橋 功季
大橋 功季株式会社クラウドマーケット 代表取締役

株式会社クラウドマーケット代表取締役。マンションの売却査定、売買仲介、販売戦略の設計など、不動産売買の現場で日々お客様と向き合っています。NTTデータ勤務を経て独立後、システム開発・Webマーケティング事業も手がけてきた経験から、データ分析やWeb集客の考え方を不動産売買にも取り入れています。実際の売却現場で感じる「分かりにくさ」を少しでも減らしたいという思いから、マンション売却メディア「マチPort」を運営しています。

マチPortでは、いろいろな立場からの情報を集めています

マンション売却には、不動産仲介だけでなく、建物管理、リフォーム、住宅ローン、税金など、さまざまな知識が関わります。

マチPortでは、不動産や住まいに関わる実務経験をお持ちの方からの記事執筆・情報提供を募集しています。

また、マンション売却について「こんなことを知りたい」という質問も受け付けています。

記事を執筆していただける方、募集中

不動産や住まいに関する実務経験をお持ちの方で、マチPortの記事制作にご協力いただける方を募集しています。

記事執筆について問い合わせる

不動産について質問する

マンション売却で分からないことや、記事で取り上げてほしいテーマをお送りください。個別の営業相談でなくても構いません。

質問を送る