今月を払えても、来月も苦しいなら問題は解決していない
まず考えるのは、これからも毎月住宅ローンを払い続けられるかです。
来月から収入を増やせるか
一時的に収入が減っているだけで、近いうちに元の水準へ戻る見込みがあるなら、住宅ローンを続けられる可能性があります。
一方、収入が減った状態が続いている、事業の資金繰りが改善していない、毎月の生活費まで不足しているのであれば、今月分だけを何とか用意しても翌月に同じ問題が起きます。
今後の収入で住宅ローンを払い続けられるかを考えてください。
いまから支出を減らせるか
生活費などを見直すことで毎月の返済を続けられるなら、それも一つの方法です。
ただし、生活に必要な支出まで削って今月分だけを払うこととは分けて考えます。
支出を減らした後も、住宅ローンを毎月払い続けられる状態になるのか。
そこまで戻れないのであれば、次は銀行への相談です。
返済を続けたいなら、銀行への相談は早い方がよい
住宅ローンには、返済額や返済期間などについて相談できる場合があります。
一定期間の返済額を減らしたり、返済期間を延ばして月々の負担を下げたりする方法です。
ただし、銀行へ電話をすれば、その場で返済額を変更してもらえるという話ではありません。
返済条件の変更には金融機関の判断が必要
返済条件を変えるには、銀行の担当者が事情を聞くだけで終わるわけではありません。
なぜ返済が難しくなったのか。
条件を変えれば、その後は返済を続けられるのか。
変更後の返済計画に無理がないのか。
金融機関側でも確認し、判断する必要があります。
返済額を減らした結果、返済期間が長くなったり、総返済額が増えたりすることもあります。
希望した条件がそのまま認められるとは限りません。
滞納を重ねてから相談するのと、早く相談するのは同じではない
まだ返済を続けている段階で、自分から連絡して今後の返済について相談する。
督促を受けても連絡せず、滞納が続いてから初めて相談する。
この二つは同じではありません。
返済条件を変えるのであれば、その後も返済できる見込みがあるのかを金融機関側が見ることになります。
銀行への連絡を避けている時間そのものが、後の相談を難しくすることがあります。
返済を続けたいのであれば、銀行から連絡が来るのを待つのではなく、自分から相談してください。
相談すれば必ず条件変更できるわけではない
銀行には返済条件を変更する方法がありますが、滞納が続いた場合には別の手続もあります。
契約や滞納状況によっては、分割で返済できる権利を失い、残っている住宅ローンを一括で請求されることがあります。
保証会社を利用する住宅ローンでは、その後、保証会社が金融機関へ残債を支払う代位弁済へ進む場合もあります。
保証会社が銀行へ支払っても、住宅ローンの債務がなくなるわけではありません。
その後は保証会社等から返済を求められます。
「滞納してから銀行へ頼めば何とかなる」とは考えない方がよいです。
あなたはいま、どこまで進んでいるか
あなたはいま、どこにいますか。
まだ数回の滞納でしょうか。
一括返済を求められていますか。
保証会社から通知が来ていますか。
それとも競売の書類まで届いていますか。
この位置を間違えると、「まだ銀行へ相談している段階なのか」「もう売却を急ぐべきなのか」の判断も変わります。
手遅れになる前のタイムライン目安
| タイミング | 自宅・ローンの状況 | 売却の自由度 |
|---|---|---|
| 滞納0〜2ヶ月ごろ | 通常の返済遅延・督促 | まだ通常売却を検討しやすい |
| 滞納3〜6ヶ月ごろ | 滞納長期化・期限の利益喪失・一括請求、代位弁済へ進む可能性 | 完済できない売却では債権者との調整が必要になる |
| 滞納6〜10ヶ月ごろ | 代位弁済後・競売申立て・差押え等が進む可能性 | 自分だけで決められる余地がかなり小さくなる |
| 競売手続が最終段階へ進行 | 売却許可・代金納付等へ進む | 自分の意思で売却する余地は最終的になくなる |
※時期は一般的な目安です。金融機関、契約内容、保証会社、返済状況、裁判所の進行等によって前後します。実際には手元に届いている通知・書類・期限を優先してください。
滞納が始まった段階
返済日に引き落としができなければ、金融機関から電話や書面などで連絡が入ります。
この時点で来月以降の返済も難しいことが分かっているなら、督促を受けるたびにその月の返済だけを用意しても問題は終わりません。
返済を続けたいなら銀行へ相談する。
難しいなら、自宅を売った場合の価格と必要な期間も調べる。
両方を同時に進めても構いません。
期限の利益喪失・一括請求・代位弁済へ進む段階
住宅ローンは通常、毎月分割して返済します。
しかし、契約上の条件に該当すると、分割して返済できる利益を失い、残っている住宅ローンを一括で請求されることがあります。
これが期限の利益の喪失です。
保証会社を利用している住宅ローンでは、所定の手続を経て保証会社が金融機関へ支払い、その後の請求先が保証会社等へ変わる場合があります。
保証会社から連絡が来たというだけで、すでに代位弁済が終わっているとは限りません。
届いている書類を見て、何の通知なのかを確認してください。
競売申立て・差押えへ進む段階
さらに返済できない状態が続けば、担保となっている自宅について競売が申し立てられることがあります。
裁判所が競売開始決定をすると、不動産は差し押さえられ、競売手続が進みます。
この段階では、インターネットに書かれている「滞納何か月」という目安より、裁判所や債権者から届いている書類と期日を優先してください。
売却するなら、現金を受け取るまでの時間を考える
自宅を売れば住宅ローンを返せるとしても、売却を決めた日に現金が入るわけではありません。
通常の仲介売却では、
売却を開始する
↓
買主を探す
↓
購入申込みを受ける
↓
売買契約を結ぶ
↓
買主が住宅ローン等の手続を行う
↓
残代金を受け取り、自宅を引き渡す
という流れがあります。
仲介売却は3〜6か月程度を見ておく
マチPortでは、不動産仲介の実務上の目安として、売却開始から残代金受取り・引渡しまで3〜6か月程度を見ています。
購入申込みが入るまで2〜4か月程度。
申込み・契約後から決済・引渡しまで1〜1.5か月程度。
一つの目安です。
これは公的な統計値でも、売却期間を保証する数字でもありません。
物件、エリア、価格、室内状態、販売時期、買主の住宅ローン、契約条件などによって前後します。
銀行側で残されている時間と比べる
住宅ローンの問題では、売却価格だけ見ても足りません。
売って現金を受け取るまでに何か月必要なのか。
ここまで見ます。
銀行や保証会社との手続はどこまで進んでいるのか。
競売手続は始まっているのか。
その期限までに、通常の仲介で売却を終えられるのか。
通常の仲介では間に合わないのであれば、売り方を変える必要があります。
売却を決めるのが遅くなるほど、高く売るための時間も減る
同じマンションでも、「いつまでに売らなければならないか」によって売り方は変わります。
売却に時間を使えるなら、設定した価格で市場の反応を見ながら買主を探せます。
すぐに買主が現れなくても、一定期間は価格を維持して販売できます。
時間があれば、価格を維持しながら買主を探しやすい
不動産は、売り出せばすぐ誰かが買うとは限りません。
希望するエリア、広さ、間取り、予算、住宅ローンの条件などが合う買主が現れるまで時間がかかることがあります。
売却期限が迫っていなければ、その買主を待つことができます。
時間が減れば、早く売るための価格調整が必要になることがある
売却期限が近づけば、同じようには待てません。
早く買主を見つけるには、周辺の競合物件より価格面で魅力を出す必要が生じることがあります。
売却を決めるのが遅くなるほど、高く売るために使える時間も減ります。
まだ売却すると決めていなくても、自宅がいくらで売れそうなのか、売却にはどのくらい時間がかかりそうなのかは先に知っておけます。
時間が足りないなら、買取も比較する
通常の仲介で買主を探す時間を取れない場合、不動産会社による買取もあります。
買取では、一般の購入者を市場で探す必要がありません。
不動産会社と価格や条件が合えば、仲介より短期間で契約・引渡しへ進められることがあります。
一方、売却価格は通常の仲介より低くなるのが一般的です。
仲介売却と不動産会社の買取
仲介売却
- 向いている状況
- 売却に一定の時間を使える
- 買主
- 一般の購入者
- 時間
- 買主を探す時間が必要
- 価格
- 市場で買主を探すため、価格を優先しやすい
- 主な判断軸
- 価格を優先
不動産会社の買取
- 向いている状況
- 売却完了を急ぐ
- 買主
- 不動産会社
- 時間
- 条件が合えば短期間で進めやすい
- 価格
- 仲介より低くなるのが一般的
- 主な判断軸
- 時間を優先
時間があるのに、急いで安く売る必要はありません。
通常の仲介では間に合わないのに、価格にこだわって時間を使い切ってしまうのも問題です。
家を売っても住宅ローンを返しきれない場合は、債権者との調整が必要になる
自宅を売る前に、住宅ローンがいくら残っているかを確認します。
次に、自宅を売った価格から仲介手数料などの売却費用を差し引き、住宅ローンを完済できるかを見ます。
売却価格と住宅ローン残高を比べる
自宅を売った手取りで住宅ローンを全額返済できるのであれば、通常の売却で完済できる可能性があります。
一方、売却代金だけでは住宅ローンを返しきれない場合は事情が変わります。
完済できない場合は債権者との調整が必要
住宅ローンを借りる際、自宅には金融機関等の抵当権が設定されているのが通常です。
買主へ自宅を引き渡すには、その抵当権を抹消する必要があります。
売却代金で住宅ローンを完済できなければ、抵当権を外してもらうための調整が必要です。
所有者の判断だけで、通常の売却と同じように引渡しまで終えることはできません。
任意売却が必要になる場合がある
住宅ローンを完済できず、返済も難しくなっている場合には、債権者の同意を得て売却する任意売却を検討することがあります。
任意売却では、売却価格や売却後に残る債務などについて債権者との調整が必要です。
任意売却をすれば住宅ローンがなくなる、という意味ではありません。
売却後に残債が残れば、その債務はその後も残ります。返済方法について債権者との確認が必要です。
この段階では、査定価格だけではなく、住宅ローン残高、売却費用、債権者、手続の進み具合まで見なければ売却方法を決められません。
競売まで進めば、自分で決められる余地はさらに小さくなる
競売は、債権者の申立てを受けて裁判所が不動産を売却し、その代金を債務の返済へ充てる手続です。
通常の仲介売却とは違います。
売却価格や売却時期を自分で決めにくくなる
通常の売却なら、自分で売出価格を決め、不動産会社を選び、販売方法を決め、買主と条件を交渉できます。
競売では、所有者が通常の販売活動を行うわけではありません。
入札によって買受人が決まり、裁判所による売却許可決定を経て、買受人が代金を納付すると所有権が移ります。
競売が進めば、自分で価格や売却時期を決められる余地はさらに小さくなります。
家を失っても債務が残ることがある
競売で自宅が売れたからといって、住宅ローンが必ず全額なくなるわけではありません。
売却代金等を充てても住宅ローン残高を返しきれなければ、残った債務について返済を求められることがあります。
自宅を失った後にも債務が残る可能性があります。
その後の返済が難しい場合には、個別の状況に応じて弁護士等へ相談することになります。
信用情報にも影響することがある
住宅ローンの返済状況は信用情報にも関係します。
全国銀行個人信用情報センターでは、ローン等の返済状況として、延滞、代位弁済、強制回収手続等の情報が登録対象になっています。
こうした情報が登録されると、新たなローンやクレジット契約など、信用情報を使う審査に影響することがあります。
ただし、すべての審査結果が一律に決まるわけではありません。
例えば賃貸住宅についても、信用情報に問題があるから必ず借りられないとは言えません。利用する保証会社や審査方法などによって異なります。
なお、フラット35など住宅金融支援機構が関係する住宅ローンでは、一般的な銀行住宅ローンの保証会社による代位弁済の説明をそのまま当てはめることはできません。
利用している住宅ローンの商品名と、現在どこから連絡が来ているのかを見てください。
今日確認すること
住宅ローンの返済が苦しいとき、最初から制度をすべて理解する必要はありません。
まず、次の5つを見てください。
- 来月以降も住宅ローンを払い続けられるか
- 何回、どのくらいの期間滞納しているか
- 銀行・保証会社・裁判所などから何が届いているか
- 住宅ローンはいくら残っているか
- 自宅はいくらくらいで売れそうで、売却完了まで何か月必要か
この5つが分かれば、次に銀行へ行くべきなのか、自宅の売却も同時に始めるべきなのかが見えてきます。
返済を続けられるのであれば、住宅ローンを維持する方法を優先します。
難しいのであれば、売却に使える時間が残っているうちに、自宅の価格と売り方を考えます。
