住宅ローン残高と、売却後に残る金額を比べる
まず、住宅ローン残高と現在の売却価格を確認します。
見るのは査定価格そのものではありません。
売却価格 − 売却費用 − 住宅ローン残高
ここがプラスになるのか、足りないのかを確認します。
まず、現在の売却価格を確認する
東京23区の中古マンション価格は長期で大きく上昇しているため、購入時の価格や当時の感覚だけで「売っても返せない」と決めず、まず現在の売却価格を確認してください。
| 時点 | 成約㎡単価 |
|---|---|
| 2006年度 | 52.23 |
| 2007年度 | 59.22 |
| 2008年度 | 56.47 |
| 2009年度 | 55.11 |
| 2010年度 | 57.61 |
| 2011年度 | 54.90 |
| 2012年度 | 54.75 |
| 2013年度 | 58.75 |
| 2014年度 | 63.96 |
| 2015年度 | 68.52 |
| 2016年度 | 71.47 |
| 2017年度 | 74.83 |
| 2018年度 | 76.82 |
| 2019年度 | 79.50 |
| 2020年度 | 83.76 |
| 2021年度 | 93.15 |
| 2022年度 | 101.63 |
| 2023年度 | 108.25 |
| 2024年度 | 118.88 |
| 2025年度 | 134.54 |
※東京23区全体の成約㎡単価です。個別マンションの価格推移とは異なります。
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ2025年・年度」「季報マーケットウォッチ 2026年4〜6月期」をもとにマチPort作成
売却に使える時間を確認する
通常の仲介では、売却開始から残代金決済・引渡しまで3〜6か月程度を見るのが一つの実務目安です。
返済期限があるなら、「いくらで売れるか」だけでなく「いつ現金になるか」まで確認します。
※売却期間は物件、価格、エリア、買主の住宅ローン等によって変わります。公的な平均値や期間を保証する数字ではありません。
売却するなら、銀行にも時間を相談する
自宅を売って返済する方針なら、銀行へその旨を伝え、売却に必要な期間を待ってもらえないか相談します。
必ず認められるわけではありませんが、売却に使える時間が増えれば、急いで価格を下げずに済む可能性があります。
時間があるなら、通常の仲介で市場価格を狙う
売却期限に余裕があるなら、最初から安く売る必要はありません。
一般市場へ出し、市場価格に近い水準で買主を探します。
買取価格が想像以上に安くなることがある理由
時間がない場合には、不動産会社による買取があります。
ただ、買取査定は一般市場で想定する価格よりかなり低くなることがあります。
買取会社は購入した物件を再販売します。再販売価格から、購入・売却時の諸費用、リフォーム費、保有・資金調達コスト、再販売リスク、事業利益などを差し引いて買取価格を決めます。
そのため、一般市場なら5,500万円前後を想定する物件に、4,000万円前後の買取査定が出ることもあります。
※5,500万円/4,000万円は仕組みを説明するための仮例で、一般的な買取率を示すものではありません。
買取では安すぎる。でも普通に売る時間もないなら
通常の仲介で市場価格を狙うだけの時間が残されていない一方、買取では価格が大きく下がることがあります。
その場合、買取価格より少し高い水準で売り出し、短期間だけ一般の買主を探してみる方法もあります。
ただし、どの程度の価格で、どのくらいの期間をかけるかは、住宅ローンの返済状況や残された時間によって変わります。
実際の状況を確認せず、「この価格まで下げればよい」と一律に決めるものではありません。
反響が弱ければ、時間を使い切る前に買取へ切り替えることも検討する必要があります。
ポータルサイトの検索価格帯も考慮する
購入者はSUUMOなどの不動産ポータルで価格上限を設定して物件を探します。
例えば9,100万円の物件を8,980万円へ変更すると、それまで9,000万円前後を上限に探していた人の検索結果へ入る場合があります。
早期売却では、単純な値下げ幅だけではなく、価格を変更することで新たな購入候補者へ届く可能性があるかも考慮します。
8,980万円なら早く売れるという意味ではありません。
価格と時間から考える3つの売り方
| 通常の仲介 | 短期間の成約を目指す仲介 | 不動産会社による買取 | |
|---|---|---|---|
| 価格 | 市場価格を狙う | 状況に応じて価格を調整 | 一般市場より大きく低くなることがある |
| 時間 | 長めに確保 | 短期間だけ一般の買主を探す | 最も短縮しやすい |
| 買主 | 一般の購入者 | 一般の購入者 | 不動産会社 |
| 向く状況 | 売却期限に余裕がある | 通常仲介の時間はないが、すぐに買取へ切り替えたくない | 売却完了までの時間を優先する |
| 注意点 | 買主が見つかる時期は確定できない | 反響が弱ければ早めの軌道修正が必要 | 売却価格は低くなりやすい |
申込みが入っても、まだ売却は終わっていない
「購入申込み=購入者からの売買代金受領」のタイミングではありません。
買主が住宅ローンを利用する場合、融資が実行され、残代金を受け取るまでには約1〜1.5か月、金融機関の手続による時間が必要になるのが一つの実務目安です。
購入申込みから残代金決済まで
- 購入申込み
- 売買契約
- 住宅ローン本審査
- 融資承認
- 融資実行
- 残代金決済
- 引渡し
なお、申込み後の本審査で買主が融資承認を得られず、ローン特約の条件に該当する場合、売買契約が解除となることがあります。
その場合、停止していた販売活動を再開し、再び買主を探すことになります。
これが、住宅ローンを利用する買主から申込みを受ける際に考慮しておきたいリスクです。
「事前審査済み」だけで安心しない
住宅ローンの事前審査は、金融機関によって提出書類や審査の粒度が異なります。
Web上の申告内容を中心に比較的短期間で結果が出る事前審査もあれば、収入や物件に関する資料等を確認し、審査に時間をかける金融機関もあります。
そのため、事前審査を通過していても、本審査で結果が変わることがあります。
「事前審査済み」という状況でも、どの金融機関で、どこまで確認された事前審査なのかによって状況は異なります。
売却期限がある場合は、その買主の住宅ローン手続がどこまで進んでいるのか、不動産会社へ確認することをおすすめします。
売っても住宅ローンを完済できない場合
売却代金から費用を引いても住宅ローンを完済できず、不足分を自己資金でも補えない場合は、通常の売却と同じようには進められません。
債権者との調整や任意売却が必要になることがあります。
任意売却については、次の記事で詳しく扱います。
自宅を売る前に確認する5つ
- 住宅ローンはいくら残っているか
- 自宅はいまいくらで売れそうか
- 売却費用を引いた後、住宅ローンを完済できるか
- いつまでに売却代金が必要か
- その時間で、どの売り方ができるか
この5つが分かれば、通常の仲介で進められるのか、短期間だけ仲介を試す余地があるのか、買取まで考える必要があるのかが分かってきます。
記事の結論
自宅を売れば住宅ローンの問題を解決できるかは、査定価格だけでは判断できません。
売却後に住宅ローンを返しきれるか。そして、返済期限までに実際の決済を終えられるか。
まず、この2つを確認してください。
売却しても住宅ローンを完済できない場合は、通常の売却とは進め方が変わります。次の記事では、任意売却が必要になる場面と、その仕組みを詳しく説明します。
