STEP 1|まず「売出価格」か「成約価格」かを確認する
たとえば、
「同じマンションの70㎡の住戸が7,000万円で掲載されている」
という情報があったとします。
ここから確認できるのは、
その住戸が7,000万円という価格で売り出されている
ということです。
「7,000万円で売れた」という意味ではありません。
売出価格は、売主が市場へ物件を出すときに設定する価格です。
成約価格は、実際の売買契約で売主と買主が合意した価格です。
したがって、
7,000万円で売出中
= 7,000万円で成約した
= 自室も7,000万円で売れる
とは考えません。
また、ポータルサイトなどへの掲載が終了しても、それだけで成約したとは断定できません。
最後に7,000万円で掲載されていたとしても、
最終掲載価格=成約価格
ではありません。
同じマンションの事例を比較するときは、まずその数字が売出価格なのか、確認された成約価格なのかを分けることが出発点です。
査定書に掲載された比較事例の確認方法については、「マンション査定書の見方」でも詳しく解説しています。
STEP 2|面積が違うなら、㎡単価でも比較する
同じマンションでも、70㎡の住戸と60㎡の住戸では、売出総額だけを並べても価格水準を比較しにくいことがあります。
そこで役立つのが㎡単価です。
たとえば、
- 70㎡・7,000万円 → 100万円/㎡
- 60㎡・6,300万円 → 105万円/㎡
となります。
総額だけを見ると前者の方が高いですが、㎡単価で見ると後者の方が高くなっています。
このように㎡単価を見ることで、面積の異なる住戸同士の価格水準を比較しやすくなります。
ただし、㎡単価は自室の価格を決める公式ではありません。
同じマンションでも、リフォーム状態、間取り、眺望、階、向きなどが違えば、価格や㎡単価に差が出る可能性があります。
㎡単価が高い、低いという事実だけで、自室の価格を決めることもできません。
そのため、
複数事例の平均㎡単価 × 自室の専有面積 = 自室が売れる価格
とは考えません。
㎡単価は、面積の異なる住戸を比較するときの物差しの一つとして使います。
STEP 3|同じマンションほど「部屋そのものの違い」を見る
同じマンションなら、立地や築年、建物、共用部分など多くの条件が共通しています。
だからこそ、比較するときには住戸ごとの違いが重要になります。
特に確認したいのは、
- リフォーム・リノベーションの状態
- 室内の使用状態
- 間取り
- 眺望
- 所在階
- 向き
- 角住戸かどうか
- 建物内での位置
- バルコニーなどの条件
です。
たとえば、
A住戸
70㎡・8階・南向き・リフォーム済み
7,200万円で売出中
という事例があり、自室が、
65㎡・4階・別の向き・リフォーム状況も異なる
とします。
この場合、
「同じマンションで7,200万円だから、自室も7,200万円」
とは考えません。
面積だけでなく、リフォーム状態、階、向きなど複数の違いがあります。
さらに同じ階や同じ向きでも、建物内の位置によって眺望や日照などの条件が異なることがあります。
重要なのは、単に「違いがある」と確認するだけではありません。
その違いを、不動産会社が自室の価格判断にどう反映しているのか
まで確認することです。
一方で、
「リフォーム済みだから+○%」
「高層階だから+○%」
「1階だから-○%」
といった固定的な補正率を機械的に当てはめることは避けます。
住戸ごとの条件を比較し、その違いが今回の市場でどう評価されると考えているのかを見ることが重要です。
STEP 4|「いつの事例か」も確認する
同じマンションでも、売り出された時期や成約した時期が違えば、同じ条件として単純比較することはできません。
たとえば、2024年の事例と2026年の事例では、その間に市場環境や周辺の競合状況などが変化している可能性があります。
そのため、
同じマンションか
だけでなく、
いつの事例か
も確認します。
ただし、
「2年前だから○%補正する」
といった固定的な調整をするわけではありません。
比較する事例がどの時点の市場を反映したものなのかを確認し、現在の価格判断へそのまま使える情報なのかを考えます。
STEP 5|現在売出中なら「競合」として見る
同じマンションで現在販売中の住戸は、過去の比較事例とは少し意味が違います。
自室をこれから売り出すなら、その住戸は購入希望者から比較される可能性のある競合住戸でもあるからです。
たとえば、自室と近い面積・間取りの住戸が同じマンション内で販売されていれば、購入希望者が両方を比較する可能性があります。
このとき重要なのは、
「相手が7,000万円だから、自室も7,000万円」
と考えることではありません。
「7,000万円のその住戸と、自室は買主からどう比較されるか」
を考えます。
価格と㎡単価だけでなく、
- リフォーム状態
- 間取り
- 眺望
- 階・向き
- その他の住戸条件
を比較します。
たとえば自室の売出価格を競合住戸より高く設定するなら、その価格差に対して買主が比較できる住戸条件の違いがあるのかを考える必要があります。
反対に、競合より低い価格から販売を始めるのであれば、その価格設定によって何を優先するのかを考えます。
同じマンションの現在売出中住戸は、自室の価格をコピーするための材料ではなく、自室の販売戦略を考えるための比較対象です。
実際の売出価格をどう考えるかについては、「マンションの売出価格の考え方」で詳しく整理しています。
STEP 6|価格変更や掲載終了は「確認できる事実」まで読む
売出事例を追っていると、
7,500万円
↓
7,280万円
↓
7,080万円
のように、売出価格が変更されることがあります。
ここから確認できるのは、売出価格が変更されたということです。
さらに、
7,080万円
↓
掲載終了
となっても、
「7,080万円で成約した」
とは言えません。
掲載終了と成約は同じではなく、最終掲載価格も成約価格ではありません。
売出事例からは、その住戸がどの価格帯で市場へ出されていたのかを見ることができます。
一方、確認できる成約事例は、実際に取引された価格を考えるための材料になります。
現在売出中の住戸であれば、これから自室を販売するときの競合として見ることができます。
それぞれ意味の異なる価格情報なので、混ぜて一つの「成約相場」を作るのではなく、役割を分けて比較することが重要です。
過去の売出情報だけでは、自室との詳細な条件差や、実際の成約価格などを十分に把握できないこともあります。
そうした場合は、公開されている売出価格だけで結論を出さず、不動産会社に比較できる成約事例や自室との条件差について相談してみるとよいでしょう。
STEP 7|高い1件・安い1件ではなく、複数の情報を見る
売主としては、同じマンションの高い売出事例が気になるかもしれません。
たとえば8,000万円の住戸が売り出されていれば、
「同じマンションなら、自室も8,000万円くらいではないか」
と考えたくなることがあります。
しかし、その8,000万円が売出価格なら、まだその価格で成約したことを意味しません。
さらに、自室とはリフォーム状態、間取り、眺望、階、向きなどが異なる可能性があります。
反対に、安い売出事例が一つあったからといって、
「マンション全体の価格が下がった」
とも断定できません。
重要なのは、最高値や最安値の一件を自室へ当てはめることではありません。
自室と比較しやすい複数の情報を、それぞれの意味を分けて見ることです。
たとえば、
- 売出事例からは、どの価格帯で市場へ出されていたのか
- 確認できる成約事例からは、どのような条件の住戸が実際にどの価格で取引されたのか
- 現在売出中の住戸からは、今どのような競合があるのか
- それぞれの総額と㎡単価はどう違うのか
- 自室とはリフォーム状態、間取り、眺望などがどう違うのか
- それぞれいつの情報なのか
を整理します。
こうした情報を重ねることで、
自室がどの価格帯で市場から比較される可能性があるのかを、一定のレンジとして考えやすくなります。
一つの売出事例から、一点の「正しい価格」を探すものではありません。
STEP 8|価格帯が見えてきたら「自分はどう売りたいか」を考える
ここまで整理しても、自動的に一つの売出価格が決まるわけではありません。
最後に考える必要があるのが、
売主自身が何を優先して売却したいのか
です。
売主によって、
「価格よりも、できるだけ早く売却したい」
という場合もあれば、
「価格を重視し、市場の反応を見ながら販売したい」
という場合もあります。
あるいは、
「一定の価格は確保したいが、売却期間も長くしすぎたくない」
という考え方もあります。
どれか一つが正解というものではありません。
だからこそ、同じマンションの高い売出事例を見つけてその価格を採用することでも、安い事例に合わせることでもなく、まず、
売出事例、確認できる成約事例、現在の競合、自室との条件差から、自室がどの価格帯で比較される可能性があるのか
を整理します。
そのうえで、
価格をどこまで優先するのか。
売却までの期間をどこまで優先するのか。
その中間を目指すのか。
という自分の条件を重ねます。
売出価格は、比較できる市場情報だけでなく、売主の希望や売却期限、販売戦略も踏まえて決めるものです。
最終的にどの価格で売り出すのかを決めるのは売主です。
