条件が同じブランドマンションが1億円。自宅も1億円で売れる?
例えば、近所にこんなマンションが売り出されていたとします。
- 駅徒歩10分
- 築10年
- 約70㎡
- 3LDK
- 売出価格1億円
自宅も駅徒歩10分、築10年、70㎡、3LDK。
そうであれば、
「条件がほとんど同じなのだから、うちも1億円くらいで売れるのでは?」
と思うのは自然です。
一般的な分譲マンション
- RC造
- 共用エントランス
- オートロック
- エレベーター
- 共用廊下
- 管理体制
- マンションとしての共用性
コーポラティブ/タウンハウス/テラスハウス等
- 構造は物件ごとに確認
- 各住戸へ直接アプローチする場合も
- 共用部の構成は物件ごとに異なる
- 小規模な場合も
- 戸建てに近い独立性
- デザイン・専用庭等の独自性
数字が近い → 比較候補の入口
実際の建物を確認 → 本当に同じ買主が比較するかを判断
実際、査定でも駅距離、築年、面積、間取りは重要な比較条件です。
ただ、このタイプの住宅では、そこで査定を終えると危険です。
私たちが次に確認したいのは、
「この2つは、買主から見ても本当に同じような住宅なのか」
という点です。
同じ70㎡でも、一般的な分譲マンションと、戸建てに近いタウンハウスでは、購入を検討する人が同じとは限りません。
だから、数字だけではなく建物そのものを見ます。
「タウンハウスだから○%減」ではなく、まず現物を見る
タウンハウスだから5%下げる。
コーポラティブハウスだから10%下げる。
そのような画一的な査定方法があるわけではありません。
同じ名称でも建物はかなり違うからです。
現地では、まず構造を確認します。
RC造なのか、鉄骨造なのか、木造なのか。
次に、建物への入り方を見ます。
共用エントランスはあるか。オートロックはあるか。ロビーや共用廊下はどうなっているか。エレベーターや宅配ボックスはあるか。そして、敷地に入ってから各住戸までどのようにアプローチするのか。
さらに、総戸数、管理会社、管理方法、共用部分の維持状態なども確認します。
例えば、敷地に入ると各住戸の玄関があり、共用エントランスやロビーがほとんどない住宅があります。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、買主によっては「マンション」というより、戸建てやアパートに近い住まいとして受け止めることがあります。
一方、近所の1億円のブランドマンションには、立派なエントランスがあり、オートロックがあり、内廊下があり、管理員がいて、マンション全体の管理状態も良い。
この二つを、駅距離・築年・70㎡という数字だけで同じように査定してよいでしょうか。
マンションのセキュリティや共用部、管理体制まで含めて1億円を払おうとしている買主なら、そもそも同じ候補として見ない可能性があります。
ここまで考えて、初めて比較対象を選べます。
反対に、「この住宅だから欲しい」という評価もあります
ここで誤解してほしくないのは、コーポラティブハウスやタウンハウス、テラスハウスだから一般的なマンションより安い、という話ではないことです。
むしろ、一般的なマンションにはない魅力が強く評価される住宅もあります。
建築家による特徴的な設計。大きなテラスや専用庭。戸建てに近い独立性。プライバシーの確保された配置。他ではあまり見ない間取り。
こうした特徴を探している買主にとっては、
「普通のマンションではなく、この住宅だから欲しい」
という購入理由になります。
デザインや希少性への評価が強く、一般的なマンションより高い価格でも買主が選ぶケースもあり得ます。
つまり、名称だけを見て一律に減点するのも間違いです。
見るべきなのは、その住宅が実際にどんな住まいなのかです。
このタイプの住宅は、机上査定だけでは分からないことが多い
一般的な分譲マンションなら、机上査定でもかなりの情報を確認できます。
同じマンションの過去事例があり、近隣にも似たマンションがある。面積、築年、階数、方角、駅距離なども確認できる。
もちろん現地確認は重要ですが、資料だけでもある程度まで価格を組み立てられるケースがあります。
ところが、コーポラティブハウス、タウンハウス、テラスハウスでは事情が違います。
例えば資料に「70㎡・3LDK」と書いてあっても、
実際に建物を見たときの印象、共用部のつくり、各住戸へのアプローチ、独立性、デザイン、管理状態などは十分に分からないことがあります。
写真だけでは伝わりにくい部分もあります。
その違いが買主の選択に影響する住宅であれば、査定にも当然関係します。
そのため、本格的に売却を検討する段階では、机上査定だけで決めず、訪問査定も受けることをおすすめします。
訪問しなければ絶対に査定できない、という意味ではありません。
ただ、一般的な分譲マンション以上に、現地を見る意味が大きい住宅です。
なぜ不動産会社でも査定を間違えることがあるのか
このタイプの住宅は、不動産会社側でも査定が難しいことがあります。
大きな理由の一つが、近くに比較できる売買事例が少ないことです。
一般的なマンションなら、同じマンションや近隣の似たマンションから事例を探せることがあります。
ところが、特殊な住宅では似た物件がなかなか見つかりません。
そこで査定担当者が、
「駅徒歩10分、築10年、70㎡、3LDK」
という条件で周辺を探す。
すると、先ほどの1億円のブランドマンションが見つかります。
数字だけなら、かなり似ています。
しかし現地を見ると、片方はRC造の大規模マンションで充実した共用部があり、もう片方は小規模で各住戸へ直接アプローチする住宅かもしれません。
逆に、特殊な住宅側に非常に高いデザイン性や希少性があるかもしれません。
ここを確認せず、近隣マンションの㎡単価をそのまま当てはめてしまえば、査定価格は市場からずれる可能性があります。
これは「不動産会社なら分かって当然」という単純な話でもありません。
比較事例が少ない住宅ほど、どの物件を比較対象にするか、そして数字では比較できない部分をどう見るかに経験と判断が必要になります。
8,500万円、8,800万円、1億円。どの査定を信じる?
例えば3社へ査定を依頼して、
| 不動産会社 | 査定価格 |
|---|---|
| A社 | 8,500万円 |
| B社 | 8,800万円 |
| C社 | 1億円 |
という結果になったとします。
売主であれば、1億円が気になるのは当然です。
少しでも高く売りたいのですから、これは自然なことです。
だからといって、「一番高い査定は危険です」という話でもありません。
確認してほしいのは、なぜC社は1億円なのかです。
近所のブランドマンションが1億円だから、その㎡単価をそのまま当てたのか。
それとも、構造や共用部、管理状態まで確認したうえで、さらにデザイン性や希少性も評価し、1億円でも買主を探せると判断したのか。
同じ1億円でも、意味はまったく違います。
高い査定が間違いとは限りません。低い査定が正しいとも限りません。
査定額を比較するときは、
「いくらですか?」の次に、「何と比べて、この価格になりましたか?」
と聞いてみてください。
ここに査定の考え方が表れます。
査定価格を確認する
比較事例を見る
構造・共用部・戸数・管理・デザイン等を確認する
本格的な売却では、訪問査定で現物の評価も確認する
1億円から売り出してみたい。それも売主の選択です
査定価格と売出価格は同じものではありません。
最終的にいくらで売り出すかを決めるのは売主です。
仮に不動産会社が「現在の市場では8,500万〜9,000万円程度の物件と比較されやすい」と説明したとしても、
「それでも、まずは1億円から挑戦したい」
という判断はあり得ます。
その希望を否定する必要はありません。
大切なのは、
8,500万〜9,000万円程度が現在の比較の中心だと理解したうえで、戦略として1億円から始めることと、
1億円が相場だと思って売り始めること
を分けることです。
前者なら、反響を見ながら、いつ価格を見直すかまで事前に考えられます。
後者では、「なぜ問い合わせが来ないのか」が分からないまま時間だけが経ってしまうことがあります。
高値で挑戦するなら、「長期間売れてない物件」になるリスクも知っておく
高値から売り出すこと自体が悪いわけではありません。
ただし、市場から大きく離れた価格のまま長期間販売すると注意が必要です。
買主は新着物件だけを見ているわけではありません。
同じエリアで探し続けている人なら、
「この物件、前からずっと出ているな」
と気づくことがあります。
その後、価格を適正な水準まで下げても、新着でその価格から売り出した場合とは受け止められ方が違うことがあります。
実務でも、価格を何度か変更しながら長期間販売されている物件を目にします。
だから最初から安く売るべき、ということではありません。
高値で挑戦するなら、現在の市場評価を把握したうえで、どこまで・どのくらいの期間挑戦するのかを販売戦略として決めることが重要です。
購入した当時のことを思い出してください
ここで、ご自身がこの住宅を購入したときのことを思い出してみてください。
当時も、近くに同じくらいの駅距離、築年、広さの一般的なマンションがあったのではないでしょうか。
それらと比べて、ご自身の住宅はどうでしたか。
少し割安でしたか?
同じくらいでしたか?
それとも、むしろ高かったですか?
そしてもう一つ。
なぜ、その価格でこの住宅を選んだのでしょうか。
価格が魅力だった。
建築家の設計が好きだった。
専用庭が欲しかった。
戸建てのような独立性に惹かれた。
他にはない間取りが気に入った。
いろいろな理由があるはずです。
この記憶は、意外に重要です。
例えば購入当時、一般的なマンションより割安だったのであれば、「なぜ割安だったのか」を考えてみる。
反対に、周辺マンションより高くても購入したのであれば、「なぜ高くても選んだのか」を考えてみる。
そこには、その住宅が市場でどのように見られていたかを知る手掛かりがあります。
もちろん、
「購入時に10%安かったから、今も10%安い」
という計算はできません。
周辺相場も、建物の築年も、管理状態も、買主のニーズも変化します。
購入時の価格差を現在へそのまま持ってくるのではなく、その住宅が一般的なマンションと比べて何を評価され、何を気にされていたのかを思い出す材料として使います。
これは、査定書の数字だけを眺めるより、ご自身の住宅の立ち位置を理解するヒントになることがあります。
査定を受けたら、この4つを確認してください
① 購入した当時、何と比較してこの住宅を選んだか思い出す
一般的なマンションだったのか、戸建てだったのか、同じような住宅だったのか。
そして、そのとき価格をどう感じたのかも思い出してみてください。
② 「何と比較して、この価格になったのですか?」と査定会社へ聞く
査定額だけを見るのではなく、
「何を比較対象にした査定なのか」
まで確認してください。
③ 比較物件が、本当に自宅と似た住宅か確認する
駅距離や築年だけでなく、
- 構造
- 共用部
- 戸数
- 管理
- 住宅としての特徴
まで近い物件なのか確認してください。
④ 本格的に売却するなら訪問査定も受ける
コーポラティブハウス・タウンハウス・テラスハウスは、
一般的なマンション以上に現地で分かる情報が多い住宅です。
机上査定だけで判断せず、訪問査定も受けて実際の建物を見た評価を確認することをおすすめします。
似たマンションを見つけたところから、査定は始まります
駅距離、築年、面積、間取りが近いマンションを探すことは大切です。
ただ、それは査定のスタートにすぎません。
この住宅は、実際にはどんな住まいなのか。
買主は何を評価し、何を気にするのか。
そこまで現物を見て考える必要があります。
コーポラティブハウス、タウンハウス、テラスハウスのように一棟ごとの個性が出やすい住宅ほど、数字だけで比較すると大切な違いを見落とします。
査定を受けたときは、
「いくらですか?」だけではなく、「何と比べて、この価格なのですか?」
まで確認してみてください。
その一手間が、納得できる売出価格と販売戦略を考えるための出発点になります。
