本当に買える人かを最初に見る
購入申込みが入ったら、価格条件より先に確認したいのが、契約から決済まで進められる確度です。
現金で購入する人なら、必要な資金を確認できていれば、少なくとも住宅ローンが不成立になるリスクはありません。
住宅ローンを利用する人なら、もう少し確認します。
例えば、
「事前審査は通っています」
と言われた。
これは大切な情報です。
ただ、事前審査を通っているから、本審査も必ず通るとは限りません。
金融機関によって事前審査で確認する内容や深さにも違いがあります。
そして住宅ローンは、買主の年収や勤務先だけで決まるものでもありません。
築年、耐震性、専有面積、権利関係など、物件側の条件が融資判断へ影響することもあります。
見るべきなのは、
「この人は属性が良さそうだから大丈夫」
ではなく、
「この買主が、この物件を、この資金計画で購入できる確度はどのくらいあるのか」
です。
もちろん、売主様自身が金融機関の審査内容を詳しく判断する必要はありません。
「この買主は、どの程度確度が高い申込みですか?」
と担当の不動産会社へ確認してみてください。
住宅ローン否決で怖いのは「販売機会を失うこと」
なぜ、300万円の価格交渉より先に、住宅ローンの確度を見るのでしょうか。
本審査で否決されたら契約がなくなる可能性がある。
もちろん、それも理由です。
でも、売主様にとってもう一つ大きいのが、その買主へ販売機会を使った時間です。
購入申込みを受ける。
価格交渉にも応じる。
売買契約へ進む。
住宅ローンの本審査を待つ。
そして、一定の時間が経ったあと、
「住宅ローンが通りませんでした」
となることがあります。
契約条件によっては、ローン特約等により契約が解除され、もう一度販売活動へ戻ることになります。
でも、時間は戻りません。
その間に物件を探していた別の人が、ほかのマンションを購入しているかもしれません。
競合物件が売れているかもしれません。
反対に、新しい競合物件が売り出されているかもしれません。
住み替えなら、その後のスケジュールにも影響します。
つまり住宅ローン否決で怖いのは、契約がなくなることだけではありません。
その買主へ販売機会を預けていた時間まで失う可能性があることです。
だから購入申込みを見るときは、
「いくらで買ってくれる人か」
だけではなく、
「この人のために販売機会を使ってよいか」
まで考えます。
- 購入申込み
- 本当に買える?
- この人のために
販売機会を使ってよい? - 断った場合、
次の買主は来そう? - 価格条件を判断
- 価格以外の条件も含めて
合意点を探す
買える人なら、次の買主が来る可能性を見る
資金面を確認して、
「この人なら決済まで進められる可能性は高そうだ」
となった。
ここで初めて、7,700万円という価格を考えます。
見るのは、
この申込みを断ったら、次にもっと良い条件の買主が現れそうか。
その判断材料になるのが、これまでの販売反応です。
ようやく来た1件か、複数の内見がある中の1件か
例えば、3か月販売している。
内見もほとんどない。
そこへ、ようやく7,700万円の申込みが入った。
この場合、
「300万円も安いから断ろう。すぐ8,000万円で買う人が来るだろう」
と考えるには少し慎重になります。
これまでの販売反応を見る限り、現在の条件で購入候補になる人が多くない可能性があるからです。
一方で、
毎月4〜5組程度の内見が入っている。
継続して検討している人もいる。
その中の1人から7,700万円の申込みが入った。
この場合は少し違います。
今回の申込みを断っても、次の購入候補が現れる可能性を、先ほどのケースよりは考えやすくなります。
もちろん、次の買主が必ず来るわけではありません。
大切なのは、
7,700万円という数字だけではなく、その申込みが入るまで市場からどんな反応を受けていたのかを見ることです。
あと100万円高く売りたいなら、待つ時間も考える
売主様として、
「あと100万円高く買ってくれる人が来るかもしれない」
と思うこともあります。
その可能性はあります。
でも、その人がいつ来るかは分かりません。
来週かもしれない。
3か月後かもしれない。
結局、来ないかもしれません。
ですから、
「あと100万円高く売れるかもしれない」
だけではなく、
「その100万円のために、どのくらい待てるのか」
も一緒に考えます。
売却期限に余裕がある人と、住み替えなどで期限が決まっている人では、同じ100万円でも判断は変わります。
価格を譲るなら、こちらから条件をお願いしてもいい
買主から、
「200万円下げてもらえませんか」
と言われた。
売主側は、
「受ける」
「断る」
の二択ではありません。
例えば、
「価格については調整します。その代わり、引渡し条件はこちらの希望を相談できませんか」
という交渉もできます。
不動産売買では、価格だけではなく、取引条件全体で双方の合意点を探すことがあります。
価格を譲るのであれば、売主側にとって価値のある条件をお願いできないか。
ここまで考えて構いません。
住み替えなら、引渡し猶予が大きな価値になることもある
例えば、現在のマンションを売ったお金を、新居の購入資金に使いたい。
この場合、旧居の売却、新居の購入、引越しのタイミングが近くなります。
かなり慌ただしいスケジュールになることがあります。
そこで、買主との合意によって、決済後も一定期間、旧居の引渡しを待ってもらう方法があります。
例えば、
旧居を決済する。
↓
売却代金を新居の購入へ充てる。
↓
その後、合意した猶予期間を使って引越す。
という組み方です。
売主にとっては、価格差以上に助かる条件になることがあります。
ですから、
「200万円下げてください」
という申込みに対して、
単純に200万円を譲るだけではなく、
「価格は調整する。その代わり、こちらに必要な条件も相談する」
という交渉があってもいいのです。
ただし、引渡し猶予は当然に使えるものではありません。
買主の同意が必要ですし、所有権移転後の使用期間、鍵、事故や損傷、費用負担、保険、契約上の責任など、整理すべき事項があります。
実際に設定する場合は、担当の不動産会社と契約条件を十分に確認してください。
まとめ
購入申込みが入ったら、まず価格を見る。
ではありません。
最初に、
この人は本当に買えるのか。
そして、
この人のために販売機会を使ってよいのか。
を確認します。
そこに問題がなければ、
この申込みを断ったとき、次の買主が現れそうかを考える。
そこで初めて、価格を判断します。
そして価格を譲るなら、売主側にも価値のある条件をお願いできないかまで考えてみてください。
購入申込みは、
「8,000万円か、7,700万円か」
だけの話ではありません。
買主の確度、失う時間、次の買主の可能性、価格、引渡し条件まで含めて、一つの取引として判断します。
