マンション売却ガイド

マンションが売れない。すぐ値下げする前に「どこで止まっているか」を確認する

「売り出して2か月経つのに、まだ売れません。価格を下げた方がいいでしょうか?」

こういう相談があります。

ここで、

「では100万円下げましょう」

とすぐ決めるのは、少し早いと思います。

その前に一つ確認したいことがあります。

この1か月、何組が内見に来ましたか?

売れていないという結果だけを見ても、原因は分かりません。

そもそも内見まで来ていないのか。

内見には来ているのに、申込みにならないのか。

この二つでは、疑うところが違います。

まず、どこで止まっているのかを見ます。

そしてもう一つ。

その数字は、何月の数字なのか。

ここも一緒に見てください。

目次
  1. 内見が少ないときは、「今が何月か」も確認する
  2. 最初の1か月だけで、売れないと決めない
  3. 内見が少ないなら、まず自分の物件を検索してみる
  4. 掲載に問題がない。それでも内見が少ないなら価格帯と競合を見る
  5. 内見には来る。それでも申込みにならないなら、見る場所を変える
  6. その内見、実は「アテブツ」になっていないか
  7. Webでは良く見える。でも現地で「思っていたのと違う」になっていないか
  8. それでも決まらないなら、現地での販売方法を見る
  9. 売主様自身が、内見を少し邪魔してしまうこともあります
  10. 内見の主役は、購入検討者です
  11. 値下げは、原因を確認してからでも遅くありません

内見が少ないときは、「今が何月か」も確認する

不動産の売買は、一年中まったく同じペースで動いているわけではありません。

買主が活発に動く時期もあれば、少し動きが鈍くなる時期もあります。

例えば、東日本REINSが公表している首都圏中古マンションの成約件数を見ると、2025年は3月が4,991件だったのに対し、8月は3,553件。その後、9月は4,475件まで戻っています。

これは問い合わせ件数ではありません。

実際に成立した中古マンション取引の件数です。

ですから、

「8月は問い合わせが必ず減る」

「3月なら売れる」

という意味ではありません。

ただ、住宅市場そのものに月ごとの動きの差があることは分かります。

例えば、

「8月は内見が1件しかなかった。価格設定を間違えたのでは?」

と思ったとしても、その1か月だけで結論を出すのは早い場合があります。

夏場に一時的に反応が弱くなっているなら、その後の動きを少し見るという判断もあります。

反対に、市場の動きが戻る時期に入っても内見が増えないのであれば、掲載状態、競合、価格を見直す理由は強くなります。

販売状況を見るときは、

「何件だったか」だけではなく、「それは何月だったか」まで見る。

これが最初の確認です。

首都圏中古マンション|月によって成約件数には波がある
2023年2024年2025年
2,0003,0004,0005,000成約件数(件)1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月 4,991件3,553件4,475件
首都圏中古マンション月別成約件数
年1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2023年2,5813,2403,4422,9542,7373,1113,2362,3673,1913,2872,9002,941
2024年2,7113,3503,8103,2512,8453,2593,1932,2993,0473,0923,2073,158
2025年3,2424,1524,9913,9503,8414,2993,9793,5534,4754,2224,4353,975

成約件数は問い合わせ件数や内見件数そのものではありません。市場で売買が動く時期の違いを見る参考として掲載しています。なお、東日本REINSでは2025年1月以降のシステム改修により、成約件数へ影響している可能性があるとしています。

出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構(東日本REINS)「月例マーケットウォッチ 2023年12月度」「2024年12月度」「2025年12月度」

最初の1か月だけで、売れないと決めない

時期とあわせて、販売を始めてからどのくらい経っているかも見ます。

販売開始直後は、

写真を撮る。

販売図面をつくる。

ポータルサイトへ掲載する。

各媒体へ情報を反映する。

こうした販売体制が整うまでに多少時間がかかることがあります。

ですから、売り出した最初の1か月だけを見て、

「内見が少ない。価格が高い」

と機械的に判断する必要はありません。

一方、販売体制が整った2か月目以降も、内見がほとんど入らない状態が続いているなら、一度原因を考えた方がいいと思います。

実務上の一つの目安として、2か月目以降、1か月に3件程度の内見も継続的に取れていないのであれば、申込み以前の段階で止まっている可能性を考えます。

ただし、ここでも「3件」を機械的に使いません。

8月の3件未満と、秋や年度末に向かって市場が比較的動いている時期の3件未満を、必ず同じ重さで評価するわけではありません。

価格帯も違います。

物件の特徴も違います。

競合の数も違います。

月3件は診断を始めるための実務上の目安です。時期・価格帯・物件特性・競合と一緒に見ます。

大切なのは3という数字ではなく、

そもそも購入検討者が見に来てくれているのか

です。

内見が少ないなら、まず自分の物件を検索してみる

内見がほとんど来ていない。

そんなときは、売主様自身でも一度SUUMOなどを開いてみてください。

自分の物件を検索して、同じエリア・近い価格帯の物件と並べて見ます。

ここで難しい分析をする必要はありません。

写真が極端に少なくないか。

ほかの物件と比べて写真がかなり見劣りしていないか。

間取り図など、買主が最初に確認したい情報が不足していないか。

その住宅の特徴がほとんど伝わらない掲載になっていないか。

まず普通の買主と同じ画面を見てみます。

明らかな問題があれば、価格を下げる前に掲載方法を直せます。

せっかく適正な価格で売り出していても、Web上で候補に入れてもらえなければ内見にはつながりません。

掲載に問題がない。それでも内見が少ないなら価格帯と競合を見る

掲載内容を見ても、周辺の物件と比べて特別おかしいところはない。

それでも内見が来ない。

ここまで来たら、価格と競合の位置関係を見ます。

単純に、

「高いから下げましょう」

ではありません。

買主は、その価格帯でほかの住宅も見ています。

例えば8,000万円で売っているなら、買主は8,000万円前後で買える別のマンションも一緒に見ています。

その中に、

自宅より少し駅に近い。

少し上の階。

眺望が良い。

室内状態も良い。

それで価格差はそれほど大きくない。

そんな物件があれば、買主から見て自宅が二番手になっていることがあります。

この場合、選択肢は値下げだけではありません。

売却期限に余裕があり、その競合が先に売れそうなのであれば、少し待つこともあります。

その物件が市場からなくなれば、次に自宅が比較の中心へ入る可能性があるからです。

反対に、売却を急いでいるのであれば、価格を調整して比較上の位置を変えることもあります。

待つのか。価格を変えるのか。

先に原因が分かれば、選べます。

内見が少ないという結果だけを見て値下げすると、この判断が抜けてしまいます。

内見には来る。それでも申込みにならないなら、見る場所を変える

次は逆です。

内見は毎月入っている。

でも、

「少し検討します」

「また連絡します」

で終わってしまう。

一度も申込みにならない。

この場合は、先ほどとは少し違います。

購入検討者はすでに、

物件情報を見て、

写真を見て、

価格を見て、

場所も確認したうえで、

「自分の時間を使って実際に見に行こう」

と思っています。

少なくともWeb上では、見に行くだけの理由があったわけです。

それなのに現地で決まらない。

ここからは、

現地で何が起きているのか

を見ます。

その内見、実は「アテブツ」になっていないか

内見件数が多ければ順調、とは限りません。

不動産の営業では、本命の住宅と比較してもらうために、別の物件も一緒に案内することがあります。

いわゆる「アテブツ」です。

例えば、同じマンションに2部屋売り出されている。

片方は自宅より少し高いけれど、階数が上で、眺望も良く、室内もきれい。

買主側の担当者が、

「比較のために、こちらも見ておきましょう」

と自宅も案内する。

先に自宅を見て、その後に本命の部屋を見る。

すると、

「やっぱり少し高くても、こちらの方がいいね」

と本命が決まることがあります。

これは、買主側仲介会社が悪いという話ではありません。

複数の住宅を比較して購入を決めるのは自然なことです。

ただ、売主側から見れば、

「毎週内見に来ているのになぜ決まらないのだろう」

となります。

そんなときは、

自宅が購入候補として見られているのか。それとも、ほかの住宅を決めるための比較対象になっているのか。

一度見てみる価値があります。

Webでは良く見える。でも現地で「思っていたのと違う」になっていないか

アテブツだけでは説明できない。

それでも内見後に毎回止まる。

次に見るのは、Webでつくられた期待と実物との差です。

写真ではかなり明るく見えたのに、実際に来ると少し暗い。

写真では広く見えたけれど、家具が入った状態では思ったより狭く感じる。

眺望を期待して来たけれど、実際に窓の前へ立つと印象が違う。

現地へ来て初めて音が気になる。

室内状態が、写真から想像していたより傷んでいる。

こういうことはあります。

だからといって、

「もっと掃除しましょう」

だけで終わる話ではありません。

見るべきなのは、

広告がどんな期待をつくり、その期待に現物が応えられているか

です。

広告側が良く見せすぎているなら、広告を見直す。

現地で改善できる問題なら、現物を改善する。

この二つは分けて考えます。

それでも決まらないなら、現地での販売方法を見る

価格も極端ではない。

掲載も問題なさそう。

内見も来ている。

明確な競合のアテブツになっているわけでもない。

Webと現物にも大きな差がない。

それでも決まらない。

ここまで来たら、現地でのプレゼンテーションも見ます。

担当者は、この住宅の魅力を理解しているか。

買主が何に反応しているか見ているか。

質問されたことへきちんと答えられているか。

その日の内見が終わったあと、

「今日はこういう反応でした」

という情報が売主へ戻ってきているか。

そして、その反応が次の販売へ生かされているか。

売れない原因を担当者だけに求める話ではありません。

ただ、内見という貴重な機会が何度もありながら、毎回同じように終わっているなら、現場で得られた情報が販売に戻っているかは確認した方がいいと思います。

売主様自身が、内見を少し邪魔してしまうこともあります

これは実際によくあります。

購入検討者が内見に来る。

売主様は在宅していて、リビングのソファに座って待っている。

ごく普通の光景です。

ただ、そのリビングがこの家で一番見てほしい場所だったらどうでしょう。

購入検討者からすると、売主様が座っているすぐ横で、

「ここにダイニングテーブル置けそうだね」

「この窓からの景色、いいね」

「ソファはこっちかな」

と夫婦で長く話すのは、少し気まずいものです。

結果として、一番見てほしいリビングを早めに出てしまう。

そしてなぜか廊下や別の洋室で、

「どうだった?」

「結構いいよね」

と二人で相談している。

これは、かなりもったいないと思います。

売主様が悪いわけではありません。

むしろ、

「質問があったらすぐ答えられるように」

「ちゃんとお迎えした方がいいのでは」

と思って、その場にいてくださっています。

ただ、内見では少しだけ考え方を変えます。

内見の主役は、購入検討者です

売主様が在宅していても構いません。

必ず外出しなければいけない、という話でもありません。

ただ、その住宅で一番魅力のある場所は購入検討者へ譲ってください。

リビングが主役なら、売主様は別の洋室などへ移る。

買主が夫婦や家族だけで話せる時間をつくる。

質問されたら答える。

住んでいた人だから分かる魅力は、必要なときに伝える。

それで十分です。

ずっと後ろについて歩く必要はありません。

設備を全部説明する必要もありません。

買主夫婦の会話へ毎回入る必要もありません。

判断基準は一つです。

その行動が、購入検討者が「この家で暮らす自分」を想像する邪魔になっていないか。

内見は、住宅を説明する時間であると同時に、購入検討者がその家を自分のものとして考える時間でもあります。

値下げは、原因を確認してからでも遅くありません

マンションがなかなか売れない。

そんなとき、価格を変えることはもちろん選択肢の一つです。

ただ、最初にやることとは限りません。

最初に見るのは、

今が何月なのか。

そのうえで、

内見そのものが来ていないのか。

内見には来るのに決まらないのか。

を分けます。

内見が少ないなら、

掲載状態を見る。

価格帯と競合を見る。

競合が消えるのを待つのか、価格を変えるのか考える。

内見はあるのに決まらないなら、

比較のためだけに見られていないか。

Webと現物に差がないか。

現地での見せ方はどうか。

担当者は内見の反応を次へ生かしているか。

売主様自身が、買主の購入体験を邪魔していないか。

そこを見ます。

値下げは対策の一つですが、原因を確認してから行うものです。

「売り出して2か月だから、そろそろ100万円下げましょう」ではなく、

購入検討者がどこで止まっているのか。

まず、そこを見つけてください。

よくある質問

マンションを売り出して何か月売れなければ、値下げした方がいいですか?

期間だけでは決められません。

販売開始直後か、販売体制が整った後かでも違います。また、季節による市場の動き、内見自体が少ないのか、内見には来ているのに申込みにならないのかでも疑うべき原因が変わります。まず販売のどこで止まっているかを確認します。

月に何件くらい内見があれば順調ですか?

一律の基準はありません。

この記事では、販売体制が整った2か月目以降も月3件程度の内見すら継続的に取れていない場合を、販売状況を見直す一つの実務上の目安としています。ただし、時期・価格帯・物件特性・競合によって意味は変わるため、3件という数字だけで判断しません。

8月に内見が少なければ、秋まで待った方がいいですか?

必ず待つべきとは限りません。

中古マンションの成約件数には月による波がありますが、成約件数は問い合わせ数そのものではありません。8月の反応だけで価格が悪いと決める必要はありませんが、掲載状態や競合も確認したうえで、その後の反応を見るか、販売方法を変えるかを判断します。

内見は多いのに売れないのは、価格が高いからですか?

価格だけが原因とは限りません。

ほかの本命物件と比較するために内見されている場合や、Web上の印象と現物に差がある場合、現地で住宅の魅力を十分に体験できていない場合なども考えられます。内見後の反応から、購入判断がどこで止まっているのかを確認します。

内見のとき、売主は外出した方がいいですか?

必ず外出する必要はありません。

ただし、購入検討者が住宅をゆっくり見て、家族だけで話せる時間と場所はつくった方がよいでしょう。特にその家で一番魅力のある場所を売主が占領せず、買主が「ここで暮らす自分」を想像できる状態にすることを優先します。

この記事を書いた人

大橋 功季
大橋 功季株式会社クラウドマーケット 代表取締役

株式会社クラウドマーケット代表取締役。マンションの売却査定、売買仲介、販売戦略の設計など、不動産売買の現場で日々お客様と向き合っています。NTTデータ勤務を経て独立後、システム開発・Webマーケティング事業も手がけてきた経験から、データ分析やWeb集客の考え方を不動産売買にも取り入れています。実際の売却現場で感じる「分かりにくさ」を少しでも減らしたいという思いから、マンション売却メディア「マチPort」を運営しています。

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