値下げ幅に「100万円が正解」という基準はありません
例えば8,300万円で売り出しているマンションがあるとします。
ここから、
「まず100万円下げて8,200万円にしましょう」
という話になることがあります。
それが悪いわけではありません。
8,200万円にすることで買主から見た位置が変わるのであれば、意味があります。
一方で、8,300万円でも8,200万円でも、同じ買主から見て、同じ競合と比べられ、印象もほとんど変わらないことがあります。
それなら、100万円下げたという事実はあっても、販売状況はほとんど変わらないかもしれません。
だから、
「100万円なら下げられる」
だけで価格を決めません。
100万円下げることで何が変わるのか。
そこまで見ます。
まず「最低でもこの価格では売りたい」という下限を持っておく
価格を動かす前に、一度考えてほしいことがあります。
「最終的に、最低でもこの金額では売りたい」
という価格です。
これは、その価格から最初に売り出しましょう、という意味ではありません。
売却期限に余裕がある。
競合との関係を見てもチャレンジする余地がある。
そういう状況なら、下限より高い価格から売り始めることもあります。
ただ、売出価格と、
「ここを下回るなら売却そのものを考え直したい」
という価格は分けておいた方がいいと思います。
例えば、
8,300万円で販売開始。
最終的には7,900万円程度までなら調整できる。
という考えがあるなら、その400万円の中で販売戦略を考えられます。
反対に、自分の下限が分からないまま、
8,300万円。
売れないから8,200万円。
また売れないから8,100万円。
と下げ続けると、どこへ向かって価格を動かしているのか分からなくなります。
何回値下げするかは、「いつまでに売りたいか」から逆算する
「毎月100万円ずつ下げる」
「3回に分けて値下げする」
と、最初から回数を決める必要もありません。
例えば、
遅くとも6か月以内には申込みを獲得したい。
そう決めていたとします。
販売開始からすでに時間が経っている。
販売体制が整ってからも内見がかなり少ない。
そして、掲載状態や競合を見た結果、価格帯に原因がありそうだと判断できた。
残された販売期間も短い。
この状態なら、100万円ずつ何度も小刻みに下げるより、最終的に許容できる価格に近いところまで一度に動かすことがあります。
反対に、
内見は月4〜5件入っている。
購入候補には入っている。
売却期限にも余裕がある。
という状態なら、いきなり下限価格まで動かす必要はないかもしれません。
下限との中間あたりへ動かして、一度反応を見るという考え方もあります。
つまり、
何回下げるかを先に決めるのではなく、残された時間と今の販売反応から決めます。
なお、「そもそも今の状態で値下げが必要なのか」は、別Guide「マンションが売れないとき、すぐ値下げする前に確認してほしいこと」で扱います。
この記事では、値下げすると判断した後の話に絞ります。
100万円下げるなら、「100万円下げたことで何が変わるか」を見る
価格変更をするときは、変更前と変更後を並べてみます。
8,300万円
↓
8,200万円
この100万円で、
何が変わるでしょうか。
新しい買主の検索結果に入るのか。
競合との価格差が分かりやすくなるのか。
それまで、
「少し高いな」
と思っていた買主が、
「この価格なら見てみよう」
と思えるところまで動くのか。
何も変わらないのであれば、値下げ幅をもう一度考える余地があります。
価格変更によって変えられるものは、単なる数字だけではありません。
例えば、
- 検索する買主の範囲
- 競合との価格差
- 同じ予算帯での見え方
- 「この価格なら検討したい」と感じる位置
- 申込み後の価格交渉に対応する余地
があります。
この中の何を変えるための値下げなのか。
そこが分かると、価格を決めやすくなります。
8,300万円 → 8,200万円
価格は100万円下がった
- 検索する買主
- 競合との位置
- 買主からの見え方
がほとんど変わらない場合もある
8,300万円 → 7,980万円
価格が下がる
条件が合えば検索価格帯の境目をまたぐ
新しい買主へ届く可能性
申込み後の価格交渉に対応する余地を設計できる
7,980万円を推奨するものではありません。実際に意味のある価格は、物件価格、競合、各ポータルサイトの検索条件、売主が許容できる価格によって異なります。
7,980万円のような価格には、二つの意味がある
例えば、8,300万円から価格を見直す場面を考えてみます。
仮にポータルサイトで、買主が8,000万円を境目とする価格条件で検索できるとします。
その場合、
8,300万円から8,200万円へ変更するのと、
8,300万円から7,980万円へ変更するのでは、
販売上の意味が違うことがあります。
7,980万円にすることで、それまでの価格では検索結果に入らなかった買主へ届くのであれば、単に320万円値下げしただけではありません。
見る可能性のある買主が変わります。
不動産ポータルサイトでは現在も価格による絞り込みが用意され、価格帯を区切った検索導線があります。ただし、具体的な区切り方はサイトや時期によって変わる可能性があるため、実際に価格変更するときはその時点の検索条件を確認します。
そして、7,980万円のような価格には、もう一つ考え方があります。
申込み後の価格交渉です。
例えば購入検討者から、
「7,500万円なら購入したいです」
という申込みが入ったとします。
売主として7,500万円までは下げられない。
だからといって、
「一切下げません」
と0回答するしかないわけでもありません。
あらかじめ7,900万円程度までなら調整できると考えていたのであれば、
「7,500万円は難しいですが、7,900万円までなら調整できます」
と返すことができます。
もちろん、これで買主が納得するとは限りません。
さらに交渉になるかもしれません。
まとまらないこともあります。
ここで大切なのは、
端数分を値引けば買主が納得する、という話ではありません。
売出価格を決める時点から、
申込みが入ったあと、どこまでなら調整できるのか
も考えておくということです。
条件が合えば7,980万円という価格には、
販売中は、価格条件の境目をまたいで新しい買主へ届く。
申込み後は、価格交渉に対して売主側からカウンターを返す余地を持つ。
という二つの役割を持たせることができます。
ただし、
7,980万円にしましょう、という記事ではありません。
物件価格も違います。
買主が使う検索条件も違います。
売主が許容できる価格も違います。
考え方だけを使ってください。
値下げは、販売状況を変えるために行う
「100万円なら下げてもいい」
「3か月経ったから、そろそろ100万円下げよう」
それだけで価格を決める必要はありません。
価格を変える前に、
その価格にすることで、今までと何が変わるのか
を考えます。
検索する買主が変わるのか。
競合との位置関係が変わるのか。
今まで候補に入らなかった人が、候補へ入れてくれるのか。
価格交渉が入ったときの着地点をつくれるのか。
そして、自分はいつまでに売りたいのか。
そこまで見たうえで価格を動かします。
値下げは、金額を小さくする作業ではありません。
販売状況を変えるために行うものです。
