マンション売却ガイド

住宅ローンを完済できなくても家は売れる?任意売却の仕組みと進め方

通常は、売却代金や自己資金で住宅ローンを完済し、金融機関などが設定している抵当権を抹消してから、買主へ引き渡します。

問題になるのは、家を売っても住宅ローンを完済できない場合です。

たとえば、住宅ローンが5,500万円残っているのに、売却代金から諸費用を差し引くと4,800万円しか返済に充てられない。自己資金でも不足分を補えない。

この場合、そのままでは住宅ローンを完済できず、抵当権も抹消できません。

しかし、債権者と調整し、完済できない状態でも抵当権の抹消に同意してもらうことで、売却できる場合があります。

これが任意売却です。

この記事では、任意売却の手続きだけではなく、

  • なぜ住宅ローンを完済できないのに売却できるのか
  • なぜ債権者は抵当権の抹消に応じることがあるのか
  • 債権者との調整をせずに売却を進めると何が問題になるのか

という仕組みから説明します。

目次
  1. そもそも任意売却とは?
  2. 住宅ローンが残っているだけなら、任意売却ではない
  3. なぜ完済できないと、そのまま売却できないのか
  4. なぜ債権者は、完済できない任意売却を認めるのか
  5. 債権者に相談せず、先に買主と契約するのは危険
  6. 任意売却では誰と相談する?銀行・保証会社・サービサー
  7. 任意売却なら、いくらで売ってもいいわけではない
  8. 任意売却はどのように進む?
  9. まだ住宅ローンを滞納していなくても相談できる?
  10. すでに競売の手続きが始まっていたら?
  11. 結論|任意売却かどうかは、売却を始める前に確認する

そもそも任意売却とは?

住宅ローンが3,000万円残っていても、家を4,000万円で売却し、売却代金から住宅ローンを完済できるのであれば、通常の売却です。

任意売却が問題になるのは、売却代金や自己資金を使っても住宅ローンを完済できない場合です。

通常の売却では、

売却 → 住宅ローン完済 → 抵当権抹消 → 買主へ引渡し

と進みます。

一方、任意売却では、

売却しても完済できない → 債権者と調整 → 抵当権抹消の承諾 → 売却 → 売却代金を返済に充当

という手順が加わります。

任意売却は「残った住宅ローンを免除してもらう制度」ではありません。完済できない状態でも、債権者に抵当権の抹消を認めてもらって売却する方法です。

債権者にとっては、債権に対する不動産担保がなくなるリスクのある判断です。

それでも任意売却が認められることがあるのには、理由があります。

住宅ローンが残っているだけなら、任意売却ではない

まず確認したいのは、本当に任意売却が必要なのかです。

売却代金で完済できる例

通常売却として進められる金額例
住宅ローン残高5,000万円
売却価格5,500万円
売却にかかる諸費用200万円
返済に充てられる金額5,300万円

この場合は売却代金で完済できるため、通常売却です。

売却代金だけでは不足する例

売却代金だけでは住宅ローンを完済できない金額例
住宅ローン残高5,500万円
売却価格5,000万円
売却にかかる諸費用200万円
返済に充てられる金額4,800万円
不足額700万円

この例では700万円不足します。

ただし、その700万円を自己資金で用意できるなら、通常売却として進められる可能性があります。

確認するのは、

「住宅ローンが残っているか」ではなく、「売却時に住宅ローンを完済できるか」

です。

なぜ完済できないと、そのまま売却できないのか

住宅ローンを借りて家を購入すると、一般的にはその不動産に抵当権が設定されます。

通常売却では、決済時に住宅ローンを完済し、それと同時に抵当権を抹消します。

ところが売却しても住宅ローンを完済できなければ、この前提が崩れます。

そこで債権者に、

「全額返済には足りませんが、この条件で売却し、売却代金を返済します。抵当権の抹消に応じてもらえませんか」

と調整する必要があります。

債権者が同意して初めて、完済できない状態での売却が可能になります。

なぜ債権者は、完済できない任意売却を認めるのか

住宅ローンが5,500万円残っているなら、債権者としては5,500万円を回収したいはずです。

それなのに4,800万円しか返済されない売却を認め、担保となっている不動産の抵当権まで抹消する。

一見すると、債権者にメリットがないように思えます。

しかし、返済が困難なまま進めば、競売になる可能性があります。

説明のために単純化すると、

任意売却と競売になった場合の仮例

任意売却と競売になった場合の回収額の仮例
任意売却競売になった場合の仮例
住宅ローン残高5,500万円5,500万円
不動産から回収できる金額4,800万円4,200万円
売却後に残る債務700万円1,300万円

というケースなら、債権者にとっても任意売却の方が多く回収できます。

※4,200万円は仕組みを説明する仮例であり、競売価格の一般的な割合を示すものではありません。

住宅金融支援機構も、任意売却は一般的に競売より高値での売却が期待でき、残債務の圧縮につながることを案内しています。

つまり、債権者が不足分を免除するから成立するのではありません。

競売など別の回収方法と比べて、任意売却の方が合理的に回収できると判断される場合があるからです。

債権者に相談せず、先に買主と契約するのは危険

売却しても住宅ローンを完済できない可能性がある状態で、

「買主を見つけて契約してから金融機関に相談すればよい」

という進め方は避けるべきです。

債権者がその売却価格で抵当権抹消に応じなければ、予定どおり決済・引渡しできない可能性があります。

買主との売買契約締結後に履行できなくなれば、契約内容や解除理由によって、違約金等の責任が問題になることもあります。

住宅金融支援機構の任意売却でも、査定後に売出価格の確認を受けて販売し、購入希望者が現れた段階で抵当権抹消について審査を受ける流れです。

抵当権抹消の承諾前に契約する場合には、債権者の承諾を停止条件とする特約を付ける旨も案内されています。

したがって、

完済できない可能性があるなら、買主との契約より先に、債権者との調整が必要になることを確認しておく。

任意売却では誰と相談する?銀行・保証会社・サービサー

任意売却の相談相手が、必ず住宅ローンを借りた銀行とは限りません。

住宅ローンの仕組みや返済状況によって、債権を管理・回収する相手が変わることがあります。

保証会社による代位弁済後は保証会社が求償する立場になることがあり、債権回収会社(サービサー)が担当するケースもあります。

そのため、

「任意売却なら銀行に許可をもらう」
「保証会社なら任意売却に応じる」

と一律には書けません。

その時点で誰が債権を管理・回収しているのかを確認し、必要な関係者と調整します。

任意売却なら、いくらで売ってもいいわけではない

任意売却では、売主だけで自由に売却条件を決められないことがあります。

債権者は売却によって担保を手放す一方、その売却代金から債権を回収するためです。

住宅金融支援機構の場合も、不動産会社による査定を経て売出価格を確認し、購入希望者が現れた後にも抵当権抹消について審査する手続きになっています。

一方で、

「任意売却だから安く売らなければならない」

という意味でもありません。

市場価格、残された時間、債権者の意向などを踏まえて販売条件を調整します。

任意売却はどのように進む?

通常売却で完済できるか確認してから、債権者と調整する

  1. 現在の売却価格を査定
  2. 住宅ローン残高を確認
  3. 通常売却で完済できるか確認
  4. 完済できない
  5. 債権者等と任意売却について調整
  6. 売出価格等を調整
  7. 販売
  8. 購入希望者
  9. 抵当権抹消等の最終調整
  10. 売買契約・決済・引渡し

まだ住宅ローンを滞納していなくても相談できる?

返済が難しくなったからといって、最初から任意売却を選ぶ必要はありません。

まず、

  • 住宅ローン残高
  • 現在の売却価格
  • 売却費用
  • 不足する場合に用意できる自己資金

を確認します。

通常売却で完済できるなら、任意売却は必要ありません。

完済できない可能性があるなら、その段階で債権者との調整方法を確認します。

返済が難しいときの確認順は「住宅ローンが払えないとどうなる?」、自宅を売る前に確認する価格と時間は「住宅ローンの返済が難しいとき、自宅を売却する前に確認すること」で説明しています。

すでに競売の手続きが始まっていたら?

競売手続が始まったからといって、その瞬間に任意売却が不可能になるとは限りません。

ただし、手続が進むほど売却に使える時間は限られます。

結論|任意売却かどうかは、売却を始める前に確認する

住宅ローンを完済できない可能性がある場合、まず確認するのは、現在の住宅ローン残高と、自宅を売った場合に返済へ充てられる金額です。

通常売却で完済できるのであれば、任意売却をする必要はありません。

一方、自己資金を含めても完済できないのであれば、買主との契約を先に進めるのではなく、債権者との調整が必要になります。

任意売却は、家を安く売るための方法でも、残った住宅ローンをなくしてもらう制度でもありません。

完済できない状態でも、債権者の同意を得て抵当権を抹消し、競売になる前に市場で売却するための方法です。

そのため、任意売却が必要なのかどうかは、売却活動を始める前に確認しておく必要があります。

出典

この記事を書いた人

大橋 功季
大橋 功季株式会社クラウドマーケット 代表取締役

株式会社クラウドマーケット代表取締役。マンションの売却査定、売買仲介、販売戦略の設計など、不動産売買の現場で日々お客様と向き合っています。NTTデータ勤務を経て独立後、システム開発・Webマーケティング事業も手がけてきた経験から、データ分析やWeb集客の考え方を不動産売買にも取り入れています。実際の売却現場で感じる「分かりにくさ」を少しでも減らしたいという思いから、マンション売却メディア「マチPort」を運営しています。

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