長細い1LDKが、相場を大きく超えて売れたことがあります
以前、長細い形をした1LDKの売却を担当したことがあります。
間取り図だけを見れば、
「少し使いにくそうだな」
と思われてもおかしくない部屋でした。
ところが、実際に室内へ入ると印象がまったく違いました。
窓の先に、住戸の横いっぱいに広がるルーフバルコニーがある。
その先には、圧倒的な眺望が広がっている。
長細いリビングも、単なる使いにくい形ではなく、その景色を長く楽しむための空間のように感じられました。
結果として、この部屋は一般的な相場水準を大きく超える価格で売却できました。
ただ、私はこれを、
「ルーフバルコニーがあるから高く売れた」
とは考えていません。
ルーフバルコニーだけなら、ほかにもあります。
眺望の良い部屋もあります。
長細い1LDKも珍しくありません。
この部屋では、それらが全部組み合わさっていました。
部屋へ入って、窓の外を見た瞬間に、
「ここで暮らしたい」
と思わせるものがあったのです。
査定で見るべきなのは、設備を一つずつ足すことではありません。
その組み合わせによって、この部屋にしかない購入理由が生まれているか。
そこまで見ます。
1,000万円かけたリフォームでも、高く売れるとは限りません
逆のケースもあります。
売主様が1,000万円をかけてリフォームした。
当然、
「これだけお金をかけたのだから、その分は評価してほしい」
と思います。
その気持ちはよく分かります。
ただ、買主は工事費の領収書を買うわけではありません。
完成した住宅を見て、
「ここに住みたい」
と思うかどうかです。
1,000万円をかけていても、買主から見ると一般的なリフォーム済み住宅と大きな違いがなければ、その費用をそのまま価格へ上乗せすることは難しいでしょう。
反対に、金額だけでは説明できない住宅もあります。
以前扱った戸建てでは、リフォームに非常に強いこだわりがありました。
リビングへ入ると、まるでプラネタリウムの中にいるような世界観が広がっている。
誰にでも好かれる内装ではありません。
「ここまでやるのか」
と思う人もいるでしょう。
でも、好きな人には強く刺さります。
これは「リフォーム費用が高いから価値がある」のではありません。
その空間そのものに価値を感じる人がいる。
そこが違います。
売主様の「この家は少し違う」は、最初から否定しません
査定の場では、
「この眺望は、ほかの部屋とは全然違います」
「このリフォームは相当こだわっています」
「近所の物件より高く売れると思うんです」
といった話を聞きます。
私たちは、それを最初から、
「相場はこうなので無理です」
とは考えません。
売主様は何年もその家で暮らしています。
私たちより、その家の良さを知っている部分があります。
だから私は、
「なぜ、そう思うんですか?」
と聞きます。
その話の中に、本当に価格へつながる価値が隠れていることがあるからです。
もちろん、売主様が魅力だと思っていることを、買主も同じように評価するとは限りません。
だから不動産会社が入ります。
売主様の感覚を否定するのではなく、
「これは買主にも伝わる価値なのか」
を一緒に見極めます。
「珍しい」と「欲しい」は違います
特殊な設備がある。
珍しい間取りになっている。
高額な素材を使っている。
それだけでは、高く売れる理由にはなりません。
大きな専用庭があっても、管理の手間を嫌う人には魅力になりません。
大胆なデザインの内装も、万人受けはしないでしょう。
でも、
「こういう家をずっと探していた」
という人に出会えば話は変わります。
不動産は、全員に好かれる必要はありません。
売却するのは一つの住宅です。
最後に一人の買主が、
「ほかではなく、これがいい」
と思えば取引は成立します。
だから査定では、「珍しいですね」で終わらせません。
その珍しさが、誰かにとって「欲しい理由」になるのか。
そこを考えます。
相場より高く売るなら、魅力を伝えるところまでが販売です
本当に特別な価値が見つかったとしても、それだけでは相場以上で売れるわけではありません。
買主に伝わらなければ意味がないからです。
写真で何を見せるのか。
販売図面で何を伝えるのか。
広告の最初に何を書くのか。
内見した人に、どこを見てもらうのか。
そこまで考える必要があります。
先ほどの1LDKなら、
「大型ルーフバルコニー付き」
と書くだけでは足りません。
室内から眺望がどう見えるのか。
長いリビングが、その景色とどうつながっているのか。
実際にそこへ立ったとき、どんな暮らしを想像できるのか。
そこまで伝えて初めて、この住宅の価値が届きます。
相場以上の価格を目指すのは、普通の販売より難しいチャレンジです。
だからこそ、
価値を見つけるところから、それを買主へ伝え切るところまで考えて販売する必要があります。
特殊な高値売却は「会社」ではなく「担当者」で選ぶ
ここは、ぜひ売主様に見てほしいところです。
相場より高い価格を目指す住宅ほど、
「どの会社に頼むか」より、「誰に任せるか」
が重要です。
なぜなら、あなたの物件を実際に販売するのは、その担当者だからです。
売主様と打ち合わせをする。
写真や見せ方を考える。
販売図面や広告表現を組み立てる。
買主や買主側の不動産会社へ、この住宅の魅力を説明する。
内見した人の反応を受けて、販売戦略を調整する。
これを続けるのは、その物件の担当者です。
査定のときには、経験豊富な上司や先輩社員が営業に同行することがあります。
説明も上手で、売主様の話をよく理解してくれるかもしれません。
でも、
あなたの物件を販売するのは、同行した上司や先輩ではありません。その物件の担当者です。
ですから、会社の説明だけでなく、実際に担当する人を見てください。
そして、ご自宅の魅力について話したときの反応を見てください。
「これは確かに面白い」
「この魅力なら、強く欲しがる人がいるかもしれない」
「この住宅なら、この価格へ挑戦する意味がある」
担当者自身が、本当にそう感じているかです。
何でも褒めてくれる担当者を選ぶ、という話ではありません。
むしろ相場は冷静に見てもらう必要があります。
そのうえで、
売主様が感じているこの住宅の価値を、担当者自身も本当に理解し、共感できているか。
ここを見てください。
相場以上の価格で販売すれば、買主からは当然、
「なぜ、この物件は周辺より高いのか」
と見られます。
そのたびに、この住宅だから選ぶ理由を伝えなければなりません。
担当者自身が半信半疑では、できません。
会社の知名度や規模の話ではありません。
その住宅の価値を心から共有できている担当者かどうか。
特殊な高値売却では、そこまで含めて不動産会社を選ぶ必要があります。
高値チャレンジには、失敗するリスクもあります
ここまで読むと、
「特別な魅力があるなら、とりあえず高く売り出してみればいい」
と思うかもしれません。
そうではありません。
相場以上の価格へ挑戦する以上、失敗する可能性もあります。
担当者が魅力を伝え切れなければ、買主には特殊な価値ではなく、価格の高さだけが見えます。
そうなると、
「相場より高く売り出され、長期間売れていない物件」
と認識されることがあります。
その状態になってから価格を下げても、最初から適正な価格で新しく売り出された物件とは受け止められ方が違います。
「ずっと売れていないけれど、何か理由があるのだろうか」
と考える買主も出てきます。
だから、
特殊な価値を見つけて相場以上へ挑戦することと、
根拠なく高く売り出すことは、まったく違います。
このチャレンジをするなら、担当者まで含めて選んでください。
その人が、この住宅のどこに価値があるのかを本当に理解しているか。
買主へ自分の言葉で伝えられるか。
反応が弱かったときには、冷静に販売方法を見直せるか。
そこまでできて初めて、相場以上の価格へ挑戦する意味があります。
まとめ
売主様が感じている、
「この家は少し違う」
という感覚の中に、本当に価格へつながる価値が隠れていることがあります。
ただし、それが買主の心にも響く価値なのかは、見極めなければなりません。
そして相場以上の価格へ挑戦するなら、その価値を本当に理解している人に販売を任せてください。
高い査定額を出してくれる会社ではなく、「なぜこの家ならその価格を目指せるのか」を心から説明できる担当者を選んでください。
